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難病患者の恋愛・結婚・出産・子育て―若年性パーキンソン病を生きる患者と家族の物語

秋山 智さん

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難病患者の恋愛・結婚・出産・子育て―若年性パーキンソン病を生きる患者と家族の物語

2017/09/26

難病患者の恋愛・結婚・出産・子育て―若年性パーキンソン病を生きる患者と家族の物語

一般にはその存在があまり知られていない若年性パーキンソン病。この本は患者さんの生活における諸問題、なかでも「恋愛・結婚・出産・子育て」の現状にフォーカスし、患者さんの手記を中心に編集されています。長年にわたり若年性パーキンソン病患者の研究に関わり、本書を出版した秋山智教授にお話を伺いました。


若年性パーキンソン病について教えてください

国の難病に指定されているパーキンソン病ですが、発症年齢のピークは50歳代後半から60歳代と言われています。しかし発症したからといってすぐに命に関わるような病気ではないため、病気を抱えたままで生涯を過ごすことになります。したがって、患者層の多くは高齢者ですので、この病気は「高齢者がなる病気」という認識が一般的です。
それに対して、若年性パーキンソン病とは「発症の年齢が40歳未満」の患者さんを指し、その存在は医療従事者にもあまり知られていません。若い世代の患者さんの人数は少なく、パーキンソン病患者全体の数%程度と言われています。難病情報センター発表の「特定医療費(指定難病)受給者証所持者数」(パーキンソン病の場合は、ホーン・ヤールの重症度分類薫幣紂砲砲茲襪函▲僉璽ンソン病の全体人数が約12万2千人、そのうち今現在で年齢が40歳未満の患者数は、全国で200人弱程度です。他に、より軽症のホーン・ヤールの重症度分類機Ν競譽戰襪凌佑燭舛おそらく数十人か数百人程度存在すると思われますが、実数は把握されておりません。


どうして若年性パーキンソン病の患者さんについて研究を始めたのですか?

今から14-5年ほど前に参加したある講演会で、一人の若年性パーキンソン病の患者さんに出会ったのがきっかけでした。私は看護師として医療の現場に10年以上いた経験があります。それでもこんなに若いパーキンソン病患者さんがいることを知らなかったので、その出会いは衝撃的なものでした。
その当時私はまだ40歳そこそこでした。その時に「もし今の自分がこの病気になったなら」と想像してみました。仕事はどうしようか、家族のこれからは・・・と考えた時に、高齢の患者さんとは違う若い世代ならではの悩みがあるのではないかと考えるようになりました。

ただ、当時は患者さんたちの抱える問題について調べようにも、若い世代に特化した文献や本などはほとんどなく、それならばと実際の患者さんから直接話を聞くことにしました。現在では全国の59名の患者さんに調査に協力してもらい、1年に1回のペースで現状を調査させてもらっています。


この本を出版されたきっかけを教えてください。

若年性パーキンソン病に関する本として、この本は2冊目の出版になります。長く調査を続けるうちに、この病気の生活面の様々な問題がわかるようになってきました。ある時から「自分だけがわかっているのはもったいない」と考えるようになっていたところに、患者さんからの勧めもあり本を出版することになりました。
そうして出版したのが1冊目になります。1冊目は特定のテーマを設けず、若年性パーキンソン病患者さんの生活上の問題についてまとめた本になりました。とてもよい本だったのですが、この本は残念ながら出版社の倒産により、現在は絶版になっています。その後、その出版社から独立された編集者の方からのお声がけもあり、2冊目としてこの本を出版することになりました。その編集者の方にはほんとうにお世話になり、その方がいなかったらこの2冊はこの世に存在しなかったでしょう。


本を作るのにあたって工夫したことはありましたか?

今回の本は、数ある問題の中でも恋愛、結婚、出産といった、健康な人にとって当たり前のことが患者さんにとって大きな問題になっていることに焦点を絞りました。病気によって諦めてしまう人もいれば、諦めない人もいる。諦めずに、たとえ難病患者でも、人として当たり前に恋愛、結婚、出産している事実があることを伝えたいと思いました。
この本は主に患者さんからの手記で構成されています。初めは恋愛、結婚、出産、子育てに関する患者さん本人の思いや現状の手記だけにするつもりでした。しかし恋愛や結婚は相手がいるもの、ならばこの病気の妻を持つ夫の思いも知りたいと夫の手記とそれを読んだ妻の感想を追加しました。さらに物心がついた時から難病の母に育てられた子どもの気持ちも知りたいと、子どもの手記とそれを読んだ母の感想という構成になり、思いのほか大作になってしまいましたね(笑)


本を出したことで、なにか反響はありましたか?

まずは私が関わっている患者さんたちが喜んでくれました。特にこの本に手記をよせてくれた患者さんは、書くことで自分の心が整理されたと話してくれます。心のうちにある苦しさやモヤモヤしたものを文章にすることによってすっきりしたようです。
他には同じ病気の患者さんたちから「苦しんでいるのは自分だけじゃないと思えた」という感想もいただきました。違う難病の患者の人からも同じような感想をいただきます。
それと、この本は大学で教科書としても使っているのですが、学生たちから「看護職である親にも読んでもらった」というような言葉をしばしば耳にして、これは嬉しいですね。
また、この本のことが新聞や専門誌などでも書評として何度か紹介されたのですが、例えば実習病院の看護部の方々とか、何人かの全国の旧知の人たちから、「新聞見たよ!」とか連絡を受けました。特にもう何年も連絡を取っていなかった人からの思いもよらぬ反響は、本当に嬉しかったですね。


最後に、これからの目標を教えてください。

医療従事者の間でも若年性パーキンソン病は、まだまだ知られていません。病院での医療従事者の対応に傷つく、若い患者さんも多くいらっしゃいます。あらゆる職種の医療従事者(特に患者さんの側にいる看護職者)に、患者さんの自尊心や症状、日頃の努力を知り、適切な対応ができるようになって欲しいと思っています。
そのために私ができることは、私の知りえたことをより多くの人に伝えていくことでしょうね。学会で発表をしたり、授業で学生に伝えたり、こうして本を出すこともその一環です。私が直接ケアできる患者さんはごく限られています。しかし私の研究に影響を受けた人々が増えれば、より多くの患者さんに対してより良いケアがなされるようになると思っています。自分の病気を理解してくれる人が増えれば、患者さんは頑張って生きていこうと思えるようになります。そういう人材を増やすことで、少しでも患者さんの役に立っていきたいですね。


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秋山 智さん

著者プロフィール

秋山智
あきやま・さとる
千葉県出身。国立精神・神経センター国府台病院 神経内科にて看護師として11年勤務。愛媛大学(医学部看護学科)助教授、産業医科大学(産業保健学部看護学科)教授を経て、現在は広島国際大学(看護学部看護学科) 教授。専門は、成人看護学(慢性期) 難病看護/慢性疾患看護。

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