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注目の著者インタビュー

『灯籠』

うえむらちかさん

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『灯籠』

2012/08/10

『灯籠』(ハヤカワ文庫JA 620円+税)

●なぜ、広島の盆灯籠を描こうと思ったのですか?

 二作目の題材を考えながら、以前に書いたプロット(物語の構成スケッチ)をめくっていました。すると、盆灯籠のプロットが出てきて……。「次は、広島を題材にした作品が書きたい」と思ったことが一番の理由です。
 私は小さい頃から、盆灯籠を持ってお墓参りにいくことが毎年の習慣でした。丈が長いので車に入れることも大変で、すっごく邪魔でした。さらにお墓が山奥にあったので、麓からは歩かなきゃいけなくて「山を登るだけでも大変なのに、何でこんなものを持っていくのだろう」と思っていました。しかし、墓地につくと、色とりどりの盆灯籠が何本も立っていて、お花畑みたいでした。私の記憶にあるこの風景を文章にしたら、すごくきれいだろうなぁと思いました。
 盆灯籠が広島独特の風習だと知ったのは、広島の地を離れてからです。最近はゴミの問題で、灯籠は初盆だけに控えるケースもあるようです。このまま盆灯籠の風習がなくなってしまうのは、寂しいです。広島のお盆の風景としていつまでも残ってほしいという願いも込めて、書きました。

●最後まで読むと、意外な結末ですね。

 この作品には、すでに亡くなっている人が主要な人物として登場します。お盆は死者が帰ってきますし、盆灯籠の景色がすごく幻想的で、そのイメージが強かったせいかもしれません。
 構成にちょっとした“しかけ”があって、第二話を読むと、第一話が少し違った物語になると思います。しかけ作りが好きなんです。先にしかけを考えてから、物語を書き始めることもあります。私自身、読んだあとに続きを想像できる話が好きなので、本を閉じたあとも楽しんでもらえる小説を書きたいと思いました。第二話は「清水クン」の話が中心なんですけど、「清水クン」は最初に描いたプロットには出てこなくて、あとから加わった登場人物です。

●「清水クン」はどのような役割で登場したのですか?

 実は、清水クンがこの物語を一つにまとめる上で、一番の中心人物です。最初はわからないと思いますが、冒頭に登場する一人称の人物も清水クンなんですよ。彼を通して、あらゆる登場人物の思いが現されています。また、その思いを一身に背負って生きていくのも彼ですから。この物語の結節点とも言える存在です。
 清水クンは結果的に思いが実らないんですよね。私は片思いのお話が好きなんです。ラブラブした恋愛話が苦手で、幸せになってもらいたいのですが、そんなに簡単には幸せにさせないぞ、みたいな(笑)。

●この小説で、読者に伝えたかったことは何ですか?

 物語の中で正造が、灯籠の並ぶ景色を見て「きれいだ」と言ったのは、私が上京後に広島を見た感想です。地元にいるときは気付かないことって、誰にでもあると思います。私みたいに故郷を離れている人が、読んで懐かしいと思ってもらえたらうれしいです。
 そうそう、今日、実家から自転車で駅まで行こうとしたら、途中でパンクしちゃって! パンクしたところが、ちょうど主人公の灯(ともり)と清水クンが河川敷を歩く場面を描いた場所でした。小説の中ではゆったりと歩いていますが、そんな感慨に浸る余裕もなく、自転車を置いて瀬野川の河川敷を駅まで走りました(笑)。
 でも、地元に帰ってきたら、やっぱりここで暮らしたくなりますね。

●女優のお仕事と作家業は、どちらの方が好きですか?

 そもそも、私の作品が映像化されて出演できたらいいなと思って、小説を書き始めたんです。脇役でもいいので(笑)。
 女優のお仕事を始める前の夢は、小説家や漫画家になることでした。中国新聞の短編文学賞などに投稿したこともあります。だから、その頃からすると、自分の作品が世に出るなんて信じられないですよ。父も無関心を装っていますが、最近の趣味は書店めぐりだと、母がこっそり教えてくれました。「あの書店にはたくさん置いてあったぞ」と、冊数までチェックしているみたいです。こんなふうに、家族や友人が喜んでくれることがうれしいです。これからもたくさん小説を書いていきたいと思っています。そして、いつか映像化された時に女優としてやってきたことが生かせればいいなと思います。

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うえむらちかさん

著者プロフィール

うえむらちか

1985年、広島県生まれ。女優としてドラマ「ライフ」「おみやさん」「ももドラ」に出演する一方、FM PORT(新潟県民エフエム)の「TOKYO→NIIGATA Music Convoy(THU)」ナビゲーターや、WEBラジオ「うぇぶらじ@電撃文庫」パーソナリティ、4コマ漫画連載など、多方面で活躍中。2010年、『ヤヌス』(講談社Birth)で作家デビュー。「うえむらちか公式ブログ“ちか道”」http://ameblo.jp/chika-uemura/

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