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注目の著者インタビュー

あきびんごさん

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『でてくるぞ でてくるぞ』(くもん出版 1050円)

2011/11/09

子どもが読み聞かせる絵本

 世間を敵にまわすかもしれませんが、僕は“絵本の読み聞かせ”に疑問を感じています。読んでいる大人が満足しているだけではないかと思うのです。もし僕が子どもだったらイヤですね。押し付けられているみたいで……。絵本を読み聞かせられるのではなく、読み聞かせをする子どもになってほしいと思っています。なぜなら、そのほうがはるかに楽しいからです。
 この絵本は、2〜3歳児でも読み聞かせをすることができます。相手はお父さんお母さんでも、おじいちゃんおばあちゃんでもいいのです。「でてくるぞ でてくるぞ」という言葉だけで、子どもはスターになれます。スターになる感覚を味わうことで“やる楽しさ”を学びます。
 例えば、広島市民球場の観客席で野球を見る人より、グラウンドでプレイする人になったほうが幸せだと思いませんか? それはすべてのことに言えます。絵本なら、聞く人より読む人、さらに言うと読む人より作る人。僕は子どもを“やる人”に育てたい。そうして1ミリでも1グラムでも幸な人生を送ってもらいたいのです。


言葉あそびと布絵が創造力を育てる

 内容は言葉あそび絵本です。例えば“れいぞうこ”には“ぞう”という言葉が隠れています。こういう感覚は大人になってからでは遅い。子どものころから言葉あそびをしていれば、ヘタなダジャレを言うような大人にはなりませんよ(笑)
 ぞうのほかに、絵本には10の動物が登場します。その中のうしの背中にのっている電車のデザインは、広島電鉄の路面電車をイメージしました。ページをめくって、電車が停まっている場所は広大付属学校前の電停です。僕はこの近くの教会に通っていました。その教会も、ちゃんと絵の中に入っています。
 絵は布で作っています。それは、僕が子どもだったら布絵のほうが楽しいからです。どんな布が使われているのかじっくり見るだろうし、いったい何種類の布が使われているのか数えます。「これなら僕にもできるかもしれない!」と思っていろんな布を集めるかもしれません。いかにして聞かせるか、ではなく、いかにして作らせるかなのです。
 実際、新潟県の糸魚川幼稚園の園児たちが僕の『したのすいぞくかん』を読んで、絵本のデザインを真似た感想文の冊子をプレゼントしてくれました。自分たちで絵本を作ってしまったことに、ものすごく感激しました。


作品の根底にあるのは尾道

 僕は60歳で絵本作家になりました。還暦の記念に何かやらなきゃなと思って、『したのどうぶつえん』という絵本を作ったのが最初です。作家名は広島出身なので「あきびんご」にしました。安芸と備後です。本当は「あきびんごカープ」にしたかったんですけどね(笑) 
 尾道の電気屋のせがれだった僕が、芸大に進み、還暦を過ぎて絵本作家になり、布で絵を作るようになったルーツをたどっていくと、あることに行きつきます。それは、幼稚園の親友のお父さんが営んでいた紳士服店です。僕はその店にある布地のカタログが大好きでした。店に行くたびにぶ厚いページをめくっては「わぁ、すばらしい。わぁ、オシャレ!」と引きつけられるように見ていました。
 僕の作品には、生まれ育った尾道が大きく影響しています。風光明媚、人柄温和、それでいてじっとしていられない気質――それが尾道です。あらゆる芸術家が「尾道は箱庭みたいだな」と言います。ある友人は「村上、わかったよ。おまえの繊細さは尾道だ」と言いました。“桂馬蒲鉾”みたいな繊細さが尾道にはあると思います。
 同じく尾道出身の大林宣彦監督と話していたときのことです。「列車が来るとき、最初に何でわかりますか」と監督は僕に尋ねました。「蒸気ですか」と僕が答えると、監督はこう言いました。「屋根の音だ。屋根がカタカタいいだすんだ。僕が少年時代、屋根がカタカタいいだすと、屋根にのぼって列車を待った。すると、海の向こうから列車がカーブして来るんだ。その光景を見ると感動して鳥肌が立つんだよ」。それを聞いたとき、僕は「やっぱり、大林監督は尾道が生んだ人だ」と確信しました。


2歳から102歳まで

 僕のテーマは「2歳から102歳まで」です。子ども向けも大人向けも老人向けもなく、人の感性とは生涯変わらないもの。だから、子どもを子ども扱いしないことです。
 還暦で絵本の世界に飛び込んでみて、いろいろと感じることがありました。大人が「読み聞かせはいいことだ」「子どもとはこういうものだ」と勝手に決めつけていることが問題です。盲目的にいいと思い込んでいることが、本当にいいのことなのでしょうか。この絵本を手にしてくださったお母さんは、絵本を子どもに与え、黙って見守ってほしいと思っています。そして、子どもが最初に読み聞かせる絵本になればうれしいです。

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あきびんごさん

著者プロフィール

あきびんご

広島県尾道市生まれ。東京芸術大学日本画卒。絵画や染付などの個展活動を行っている。また、幼児教育の研究者でもあり、さまざまな教材・教具・文具の開発を手がける。絵本作家としては、デビュー作『したのどうぶつえん』で第14回日本絵本賞を受賞。主な作品に『したのすいぞくかん』『あいうえおん』『あいうえおんカルタ』『あきびんごの創造性を育てる○つけドリル』『くもんのはじめてのずかん』(以上くもん出版)など著書多数。

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