広島の本|広島の出版物と、広島にゆかりのある出著者・出版物を検索・紹介するWebSite

注目の著者インタビュー

平 安寿子さん

12

『しょうがない人』

2011/09/05

『しょうがない人』(中央公論新社刊 1575円)

 この作品は「婦人公論」に連載されることがわかっていたので、夫と子どもがいて、姑や親戚との付き合いもあって、パートで働きながら家事をするとても忙しい主婦を軸に据えています。小説のテーマを決める際に“めんどくさい人カタログ”みたいなのをやりたいという話がありました。どのように展開させるか考えて、受け身でボーっとしたタイプの40代の主婦を主人公にしました。
 主婦にとって身近なストレスは家の中にいる家族ですよね。それに加えて、外には付き合いたくないのに付き合わなきゃいけない人がいて。いろんな種類のはた迷惑な人たちにふりまわされます。主人公の日向子に降りかかってくる問題は、何一つ解決しません。現実においても、きれいに解決する問題なんてないと思っています。解決はできない。でも、解決できないなりに、なんとか迂回したり、妥協したりして、乗り越えていかなければならないですよね。

 私が小説で新人賞をとったのは46歳の時でした。おばさんになってからプロになったわけです。だから、私が書くからには“現実の中で生きることに寄り添った話”を書きたいと思っています。40代以上の現実には“介護”というテーマが必ず降りかかってきます。
 私が東京でフリーライターをしていた30代のとき、お世話になっていた40代の方は「40代が4人集まると、3人は介護の話題になる」と言っていました。事実、私が40代になって広島に戻った途端に、母親がうつ病を患って体調をくずし、慢性心不全も伴って病院通いするようになりました。介護は肉体的にも精神的にもきつく、追い詰められました。この作品の中でも、日向子はいずれ訪れる姑との同居や介護に不安を抱えています。

 作品の舞台は不特定の街ですが、「狸男」として登場する人物は広島に実在する人がモデルになっています。口から出まかせをポンポン言う詐欺師のような人です。すごく腹が立つのに、その人の話を別の人にするときは不思議とおもしろくなってしまう。だから「このキャラクターはぜひ使おう」と決めていました。嫌で厄介なヤツほど、小説にするとおもしろいんですよね。

 いろんなめんどくさい人が登場する中で、一番めんどくさい人は“自分”なんです。みんな、自分にふりまわされる。いくつになっても自我が芽生えて、人間を一番苦しめているのは自分です。なぜなら自分と向き合うことはとても難しい。人が持ち込んでくる問題であれば「私は関係ありません」と言ってしまえば済みますが、自分のことになると、どうしたらいいのかわからなくなりませんか。混乱を招く問題の多くは、自分に原因があると思います。自分の気持ちを理解してもらえないと「ここですねている場合じゃない」と頭でわかっていても気持ちが抑えられないなど、理性的でない腹立たしさってありますよね。
 “自分”とは非常にコントロールしがたいものだけど、自分を肯定しなければ生きていけない。だから、主人公の日向子は「こんな私で悪いか! もう、しょうがないでしょう!!」と、自分を含めたしょうがない人たちを受けとめていくのです。いろんな問題を抱えながら生きている人におもしろく読んでもらえるんじゃないかな、と思っています。

12
平 安寿子さん

著者プロフィール

平 安寿子

たいら・あすこ/1953年、広島県生まれ。広島市在住の小説家。1999年に『素晴らしい一日』で第79回オール讀者新人賞を受賞。小説に『くうねるところすむところ』『愛の保存法』『恋はさじ加減』『あなたがパラダイス』『恋愛嫌い』『幸せになっちゃ、おしまい』『さよならの扉』『ぬるい男と浮いてる女』『神様のすること』などがある。

注目の著者インタビュー一覧

Copyright@Themediasion.co.,ltd  相互リンクはこちら
株式会社ザメディアジョン 新卒採用のコンサルティング・アウトソーシング 広島グルメwalker 合同説明会&就職勉強会