広島の本|広島の出版物と、広島にゆかりのある出著者・出版物を検索・紹介するWebSite

注目の著者インタビュー

『広島学』

岩中祥史さん

1

『広島学』

2011/08/12

『広島学』(新潮社刊 580円)

 広島出身でもない私がこんなタイトルの本を出していいものか、悩みました。しかし、広島出身だから広島のことをよく知っているかというと、そうでもない。例えば「なぜ“広島”という地名になったのですか」と聞いても、必ずしも答えは返ってきません。客観的に広島を見るからこそ、書けることもあるのではないかと思いました。
 広島において、宮島と原爆ドームの二つの世界遺産はたしかに大きな魅力です。しかし、私はそれ以上に広島の風土に強いインパクトを感じています。そのことをもっと多くの方に知ってもらいたいと思っています。

 正直、もともと広島への関心はそれほど高くありませんでした。興味を持ったのは、取材のために広島を訪れるようになった2008年のことです。タクシーの運転手さんの話し方が私の育った名古屋の言葉にそっくりだったのです。思わず運転手さんに「名古屋のご出身ですか?」と尋ねました。その運転手さんは府中市の出身でした。例えば、タバコの「ハイライト」が名古屋では「ヒャーリャート」になるわけですが、この「ア」と「エ」が混ざったような発音(英語のæの発音)が広島県の備後地域でも使われていたのです。こんなところで名古屋弁を耳にするとは思っていなかったので、驚きましたね。
 言葉への関心から始まり、取材は3年に及びました。広島へ13〜14回足を運び、合計およそ50泊。長いときは1週間滞在しました。滞在中に入ったラーメン屋の店員、飲み屋のマスター、たまたまとなりに座ったお客さんなど、普通に広島で生活している人にそれとなく話を聞きながら取材を進めました。もちろん、本を書くとは言わずにね。そのほうが正直な話を聞くことができますから。それどころか、聞いてもないことをどんどん話してくれました。

 取材を重ね、多くの資料を調べるなかで、僕が最も興味深かったことは広島の風土です。「過去は振り向かない。常に前を向いている。しかも前には明るい未来がある」。こんな根っからの楽観主義が広島人の最大の魅力です。街の姿かたちは想像以上にそこに暮らす人々の心に影響を与えると思っています。広島の場合、「とても狭いところだ」というのが第一印象でした。山が迫っていて平野が少ない。狭いからこそ、大きな野望を持って外へ出ようとします。広島は47都道府県中、最も海外へ移民を出している県だといいます。その資料を手にしたとき、とても合点がいきました。広島の人の“好奇心とセットになった冒険心”は私の心を捉えました。だから、この本の序章は「前へ」「外へ」の広島人気質について書いています。
 広島と名古屋は、地元のプロ野球チームへの情熱や方言は似ていますが、本質は全然違います。名古屋はどちらかと言えば、保守的で冒険を嫌います。僕は名古屋で育ちましたが、あまりそういうタイプではない。気質は広島のほうが近いと思います。それが今回の取材でわかりました。明るい未来だけを見て行動することも時には大事です。その筆頭が広島人ではないでしょうか。

 これまで、名古屋・博多・札幌・広島についての本を出しましたが、反響の大きさは広島がダントツで一番です。出版元の新潮社への問い合わせ件数も圧倒的に多いそうですし、感想の手紙も寄せられています。なかには「それは違うんじゃないか」という熱い指摘もありました。編集担当者に言わせると、通常の文庫本ではありえない反響だそうです。出版後、改めて広島人の郷土愛の強さを感じています。
 本を書き終えて強く願うことは「広島らしさをどこまでも通してほしい」ということです。今や“日本=東京”のような空気が漂い、地方都市は東京のモノマネばかりです。広島が広島を貫き通すことは、いい意味で万人ウケすると思います。だから東京にかぶれることなく、「前へ」「外へ」、明るい未来を見続けてほしいです。

1
岩中祥史さん

著者プロフィール

岩中祥史

いわなか・よしふみ/1950年三重県に生まれ、愛知県名古屋市で育つ。東京大学文学部卒業。出版社に勤務した後に独立。編集企画会社・株式会社エディットハウス代表取締役。「大(でゃあ)ナゴヤ人元気会」事務局長。著書に『名古屋の謎だぎゃあ(正・続)』『不思議の国の信州人』『出身県でわかる人の性格』『県民性仕事術』『日本全国都市の通信簿』『名古屋の品格』『博多学』『札幌学』などがある。

注目の著者インタビュー一覧

Copyright@Themediasion.co.,ltd  相互リンクはこちら
株式会社ザメディアジョン 新卒採用のコンサルティング・アウトソーシング 広島グルメwalker 合同説明会&就職勉強会